📅 情報基準日:2026年5月現在
普通借家契約では、貸主(賃貸人)が借主に建物の明渡しを求めるには「正当事由」(借地借家法28条)が必要です。正当事由は借主保護のための強行規定であり、単なる賃料不払いや契約期間満了だけでは認められません。裁判所の判例から、正当事由の判断基準と立退料の算定方法を学びます。
正当事由の判断要素(借地借家法28条)
借地借家法28条は、正当事由の判断において以下の事情を考慮するとしています:
| 判断要素 | 内容 | 裁判所の評価 |
|---|---|---|
| 建物使用の必要性(貸主側) | 自己居住・老親の居住・事業使用の必要性 | 必要性が高いほど正当事由あり |
| 建物使用の必要性(借主側) | 代替住居の有無・長期居住・生活基盤 | 必要性が高いほど正当事由なし |
| 建物の現況 | 老朽化・危険性・耐震性不足 | 老朽化が顕著なほど正当事由あり |
| 従前の経緯 | 更新拒絶の理由・賃料支払い状況 | 総合的に判断 |
| 立退料の提供 | 正当事由を補完する財産的補償 | 立退料で正当事由が補完される |

立退料の算定基準と判例の傾向
立退料は正当事由の不足を金銭で補完するものであり、金額は個別事情によって大きく異なります。裁判所が考慮する主な要素:
- 借主が現住居に住み続ける必要性の程度(代替住居の有無・生活基盤)
- 立ち退き後の転居費用(敷金・礼金・引越し費用等の実費相当額)
- 家賃差額(現在の賃料と同等物件を借りた場合の賃料差額の将来分)
- 営業補償(賃借人が店舗や事業所として使用していた場合)
- 造作・設備の補償(借主が設置した造作の買取り相当額)
居住用建物の場合、立退料は賃料の数ヶ月〜数年分が目安とされることが多く、事業用建物(店舗・事務所)の場合は営業補償が加わるため高額になる傾向があります。
老朽化を理由とした明渡し請求の判例
建物の老朽化・危険性を正当事由とした明渡し請求は、以下の場合に認められやすい傾向があります:
- 耐震診断で耐震性不足が明らかになった建物(特に旧耐震基準建築物)
- 建築確認なしで建てられた違法建築物
- 大規模修繕が不可能なほど損耗・老朽化が進んだ建物
- 再開発事業に伴う建替えの必要性(公益性を帯びる場合)

更新拒絶の手続きと注意点
- 更新拒絶の通知は期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に行う(借地借家法26条)
- 通知の方法:書面(内容証明郵便)が望ましい(口頭では証拠として不十分)
- 通知期間を過ぎた場合:法定更新となり、さらに1年待って通知が必要になる
- 正当事由は通知時点において存在する必要がある(後から事情が生じても原則として考慮されない)
FAQ
Q. 賃貸借契約の期間が満了したので明け渡してほしいと伝えましたが、借主が出て行きません。強制的に追い出せますか?
A. 自力救済(鍵の交換・荷物の撤去等)は禁止されています。正当事由がある場合は、①更新拒絶通知、②交渉・調停(裁判所の民事調停)、③建物明渡し請求訴訟・強制執行という手順を踏む必要があります。正当事由が弱い場合は立退料の提示を検討することが現実的です。弁護士に相談することをおすすめします。
Q. 借主が長年住んでいるため立退料が高くなると聞きました。どのくらいが相場ですか?
A. 居住用の場合、居住年数・代替住居の有無・転居費用等によって大きく異なりますが、一般的に家賃の24〜60ヶ月分(2〜5年分)程度が目安として示されることがあります。事業用(店舗・事務所)はさらに高額になることが多いです。弁護士・不動産鑑定士による個別試算を行うことをおすすめします。
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免責事項
本記事は執筆時点の判例・法令に基づきますが、個別の法的判断は弁護士等の専門家にご相談ください。正確性・完全性を保証するものではありません。
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