無権代理(民法113条〜117条(e-Gov法令検索))と相続が組み合わさった問題は、宅建試験の中でも難易度が高い部類に属します。「無権代理人が本人を相続した場合」「本人が無権代理人を相続した場合」で結論が異なることを判例から理解することが重要です。
無権代理の基本(民法113条〜117条(e-Gov法令検索))
代理権のない者が他人(本人)の名義で行った代理行為(無権代理)は、本人が追認しなければ本人に効果が帰属しません(113条1項)。相手方は本人による追認か、無権代理人への責任追及(117条)のいずれかを選択できます。

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重要判例①:無権代理人が本人を単独相続した場合
最高裁判所 昭和40年6月18日判決 民集19巻4号986頁
事案:AがBの代理人として甲土地をCに売却したが、Aは代理権を有しなかった(無権代理)。その後、本人Bが死亡し、無権代理人AがBを単独相続した。AはCからの追認請求に対し「追認しない(拒絶する)」と主張した。
最高裁の判断:無権代理人が本人を単独相続した場合、本人と無権代理人の地位が同一人に帰一する。この場合、信義則上、追認の拒絶は許されず、無権代理行為は当然に有効となると判示しました。
理由:追認拒絶を認めると、無権代理人が自ら行った行為の責任(117条)を相続によって免脱できてしまうから。
重要判例②:本人が無権代理人を単独相続した場合
最高裁判所 昭和37年4月20日判決 民集16巻4号955頁

事案:AがBの代理人として甲土地をCに売却したが無権代理。無権代理人AがCとの間で責任追及(117条)を受けていたところ、Aが死亡し、本人BがAを単独相続した。
最高裁の判断:本人Bが無権代理人Aを相続した場合、本人BはAの無権代理行為を追認することも拒絶することもできる立場にある。相続によって当然に無権代理行為が有効にはなりません。本人の地位として「追認拒絶の自由」が保持されます(ただし信義則の限界あり)。
重要判例③:共同相続人の一人が無権代理人を含む相続
最高裁判所 昭和63年3月1日判決 民集42巻3号157頁
無権代理人Aが死亡し、本人Bと第三者Cが共同相続した場合、AのBへの無権代理行為の効力が問題となりました。
最高裁の判断:共同相続人全員が追認しない限り、無権代理行為は有効にはなりません。本人Bだけが相続持分で追認を拒絶できる地位にあり、本人の追認拒絶権は相続によって失われないと判示しました。
無権代理と相続の判例マトリクス
| 相続のパターン | 結論 | 判例 |
|---|---|---|
| 無権代理人が本人を単独相続 | 追認拒絶不可 → 当然有効 | 最判昭和40年6月18日 |
| 本人が無権代理人を単独相続 | 追認拒絶可 → 当然には有効にならない | 最判昭和37年4月20日 |
| 共同相続(本人+第三者) | 全員追認しなければ有効にならない | 最判昭和63年3月1日 |
無権代理人の責任(民法117条)
無権代理行為が本人に追認されない場合、無権代理人は相手方に対し「履行または損害賠償」の責任を負います(117条1項)。ただし以下の場合は責任を負いません:
- 相手方が無権代理であることを知っていた(悪意)
- 相手方が知り得た(有過失)→ 令和2年改正で明文化(117条2項1号)
- 無権代理人が制限行為能力者であった(117条2項2号)
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まとめ
無権代理と相続の判例は「誰が誰を相続したか」の事実関係を正確に把握することが最優先です。「無権代理人→本人を相続(追認拒絶不可)」と「本人→無権代理人を相続(追認拒絶可)」の非対称な結論を、判例の理由(信義則・本人保護)から理解してください。
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参考資料・公式情報
💡 四冠ホルダーからの一言:宅建試験は「なぜそのルールが存在するのか」という背景理解が合格の近道です。条文の丸暗記より、制度の趣旨を掴むことを意識してください。

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