※本記事の情報基準日:2026年5月
「退去費用として50万円を請求された」「壁紙全部交換で30万円の請求が来た」など、退去費用トラブルは賃貸契約終了時に最も多発するトラブルの一つです。不当な請求に対して正しく異議を申し立てる方法を解説します。
まず知るべき「原状回復義務」の範囲
借主の原状回復義務は「借主の故意・過失・善管注意義務違反・その他通常の使用を超える使用による損耗や毀損」に限られます(民法621条)。通常の生活で生じる変化(日焼け・壁紙の変色等)は「経年劣化」として貸主の負担です。
| 項目 | 負担区分 | 理由 |
|---|---|---|
| 壁紙の日焼け・変色 | 貸主負担 | 経年劣化 |
| たばこのヤニ汚れ | 借主負担 | 故意・過失(通常超える使用) |
| フローリングの家具跡 | 貸主負担 | 通常使用 |
| フローリングに子どもがつけた傷 | 借主負担 | 注意義務違反 |
| ペットによる傷・臭い | 借主負担 | 通常超える使用 |
| 鍵の紛失 | 借主負担 | 故意・過失 |
| エアコンの通常汚れ | 貸主負担 | 経年劣化・通常使用 |
退去費用の「おかしい請求」パターン
- 壁紙の全室張り替えを全額請求:耐用年数(6年)を考慮した残存価値しか請求できない。築6年超の物件なら借主負担は実質ゼロに近い
- 入居時から存在していた傷の請求:入居時チェックシートで確認していない傷まで請求するケース
- 経年劣化を借主負担で請求:日焼け・汚れ・壁の変色など、通常使用の範囲内のものを一方的に借主負担にするケース
- 相場を大幅に超えた業者費用:市場価格の2〜3倍の業者に発注して請求してくるケース
耐用年数を使った具体的な計算例
壁紙(クロス)の耐用年数は6年。10年住んでいた場合の請求の妥当性:

借主が故意で壁を傷つけた場合でも、「壁紙の現在の価値」を基準に計算します。新品時の価格を100%とすると、10年経過後の残存価値は約10〜17%。つまり新品張り替えに10万円かかる場合でも、借主が負担するのは1〜1.7万円程度が妥当です。
異議申し立ての具体的な手順
- 明細書を全項目分要求する:根拠・単価・数量を明示させる
- 国交省ガイドラインを根拠に書面で反論する:「○○の損傷は通常使用の範囲であり、借主負担外です。ガイドライン〇〇ページ参照。」と具体的に記載する
- 内容証明郵便で異議通知を送る:「○○円は不当請求であり、当該費用の返還を求めます」
- 消費生活センター(188)に相談する:無料で専門家に相談できる。業者への交渉代行もしてくれることがある
- 少額訴訟を起こす:60万円以下なら本人が裁判所に申立できる
証拠として保管すべきもの
- 入居時・退去時の写真・動画
- 入居時チェックリスト(管理会社が渡したもの)
- 賃貸借契約書(特約の内容確認)
- 重要事項説明書(特約の説明記録)
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まとめ
- 経年劣化・通常損耗は貸主負担。借主負担は故意・過失・注意義務違反に限る
- 耐用年数を考慮した「残存価値」以上の請求は不当になり得る
- 明細書取得→ガイドライン根拠の書面反論→内容証明→少額訴訟の順で対処する
- 入居時から退去時まで写真・書類を保管しておくことが最大の予防策
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【監修者】ゆうぜん|不動産四冠ホルダー(宅建士・管理業務主任者・マンション管理士・賃貸不動産経営管理士)。賃貸借契約・敷金トラブル・原状回復に精通した実務家として、正確で実践的な情報をお届けします。
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💡 四冠ホルダーからの一言:賃貸トラブルの多くは「事前の確認不足」から生まれます。契約前に重要事項説明書を隅々まで読み、不明点は必ず書面で確認しましょう。

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