📅 情報基準日:2026年5月現在
「年収の5倍まで借りられますよ」——不動産営業からそう言われて安心して購入を決めた方が、数年後に返済に苦しむケースは珍しくありません。「借りられる額」と「返すべき額」は別物です。宅建士として、無理のない住宅ローンの正しい考え方をお伝えします。
「年収の何倍」という目安の正しい使い方
よく言われる「年収の5〜7倍」という目安は、金融機関が審査で通す上限に近い数値であり、「返済に無理がない額」ではありません。実際は年収・家族構成・生活費・将来の支出計画によって大きく変わります。
| 指標 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 金融機関が審査で通す上限 | 年収の7〜8倍程度 | 返済比率35〜40%以内が条件 |
| 一般的に「安全」とされる範囲 | 年収の5〜6倍 | 返済比率25〜30%程度 |
| 生活に余裕が持てる範囲 | 年収の4〜5倍 | 返済比率20〜25%以内が理想 |
年収別・借入額シミュレーション(変動金利0.5%・35年返済)
| 世帯年収 | 返済比率25%での月返済額 | 対応借入額の目安 | 年収の倍率 |
|---|---|---|---|
| 400万円 | 約83,000円 | 約2,400万円 | 約6倍 |
| 500万円 | 約104,000円 | 約3,000万円 | 約6倍 |
| 600万円 | 約125,000円 | 約3,600万円 | 約6倍 |
| 700万円 | 約146,000円 | 約4,200万円 | 約6倍 |
| 800万円 | 約167,000円 | 約4,800万円 | 約6倍 |
返済比率を25%に固定すると、借入可能額は概ね年収の約6倍になります。ただし変動金利の場合は上昇リスクがあるため、実質的に余裕を持たせた設計が必要です。
「借りられる額」より「返せる額」で考える3ステップ
ステップ1:手取り月収から生活費を引く
手取り月収(税引き後)から食費・光熱費・通信費・保険料・教育費・車費用などの生活費を引いた可処分所得を算出します。ここから貯蓄・緊急予備費を差し引いた残りが「実質的に使えるローン返済額」です。
ステップ2:将来の支出増を見込む
子どもの教育費・老後の資金・住宅の修繕費などは将来確実に発生します。特に子どもが中学〜大学進学期には教育費が年間200〜300万円以上かかるケースもあります。これらを考慮した上で返済可能額を設定しましょう。
ステップ3:金利上昇シナリオでも返せるかチェック
変動金利の場合、金利が1〜2%上昇した場合の返済額でも家計が成立するかをシミュレーションします。「現在の金利で余裕がある」ではなく、「上昇後でも耐えられる」水準が本当の安全ラインです。
年収別・無理のない借入額の実践例
夫婦共働き・子ども1人・車あり・世帯年収600万円の場合の試算例です。
- 手取り月収:約38万円
- 生活費(食費・光熱費・通信・保険・車):約20万円
- 貯蓄・教育費積立:約5万円
- 返済に充てられる上限:約13万円/月
- 変動0.5%・35年の場合の借入可能額:約3,700万円
- 金利1.5%上昇(2.0%)でも月13万円以内に収まる借入額:約2,600万円
金利リスクを見込むと、審査で通る3,700万円より約1,000万円低い水準が実質的な安全ラインです。この差を頭金で補うか、より安い物件を選ぶかが判断のポイントになります。
よくある質問(FAQ)
Q. 共働きの場合、収入合算やペアローンで借入額は増やせますか?
A. 増やせますが、両者の収入を合算した分だけリスクも倍になります。どちらかが育休・退職した場合に片方の収入だけで返済できるかのシミュレーションを必ず行ってください。
Q. 年収の3倍以下に抑えれば絶対安全ですか?
A. 借入額が少ないほどリスクは低いですが、3倍以下というのは過度に保守的な場合もあります。重要なのは倍率より「毎月の返済が家計の何%か」という返済比率の視点です。
Q. ボーナス払いを組み合わせた場合の考え方は?
A. ボーナスは業績・景気によって変動するため、住宅ローンの主軸にするのはリスクが高いです。ボーナス払いは「あくまで補助」と考え、月々の返済で完結する設計を基本にすることをお勧めします。
まとめ
- 「借りられる額」は年収の7〜8倍程度だが、「返すべき額」は4〜6倍が目安
- 手取りから生活費・貯蓄を引いた残りで返済可能額を計算するのが正しい手順
- 金利上昇後でも耐えられる額が本当の安全ライン
- 将来の教育費・修繕費など確実に増える支出を必ず見込んでおく
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